近代的生活環境を維持しながら室内の有害化学物質を完全に排除することはほぼ不可能とされています。それでも日常生活の工夫次第ではその濃度を最低限に抑えることも可能であり、その対策方法の一部を取り上げてみました。
尚、シックハウス問題は化学物質に限った事ではなく、湿気やダニなどとも因果関係が深く、それらの対処方も合わせて付記しておきます。


室内空気環境の改善対策
新築後 完成後約2〜3週間通気させてから入居する。それが無理な場合は下記「ベイクアウト」を施す。特に完成後住居内に立ち入った際、鼻にツンとくる臭いがしたり目がチカチカしたりした場合は充分な措置を施す。
リフォーム後 内装リフォームを施した場合は上記新築同様の措置をとる(但し改装部位により異なる)。やむを得ず居住しながら内装工事をする場合は施工業者と相談し、ほこり、粉塵などを含め空気環境に充分配慮する計画を立てる。
窓開け換気 最も効果的。
冷暖房時でも5分程度の窓開け換気を1時間に1回以上行なう。
春から夏場にかけて気温の上昇する時期が、揮発性化学物質の濃度が最も上がる時期であり、この時期は特に窓開け換気を心掛ける。エアコン使用時にもこの換気を忘れないようにする。
ベイクアウト 築後間もない時期に室内の温度を意識的に上げ(35〜40℃)、放散を強制的に促進させ、室内汚染を低減させる方法。しかし、ホルムアルデヒドに関しては他のVOCに比べ放散効率が悪く、一時的に濃度が減少しても再び上昇し、低減効果は少ないとされている。また、温度を上げすぎると内装材が剥がれたり、建具が反ったりするので注意が必要である
温度管理 住宅建材に含まれる化学物質は気温上昇と共に放散が活発となる。
このような事から、特に夏場は窓から入る直射日光などをできるだけ遮り、外出時には雨戸やカーテンを閉め、室内温度の上昇を防ぐ。また、新築時には庇(ひさし)や軒の出をできるだけ確保し、自然に温度管理ができる設計が望ましい。昔の日本家屋に見られる縁側や庇は、夏場の高い陽を遮り、冬場の低い陽は取り込んで暖をとるといった室温管理の機能を備えていた。ちなみに、最近の住宅はコスト削減のためか、庇や雨戸さえも付いていないものが増えている。
換気扇 換気扇を回す場合は、その対角線上の位置から空気を取り込むよう配慮し、空気の流れをつくる。
空気清浄機 換気効果には及ばないが、換気による低減化を補助することによって効果が得られる機種もある。また、屋外大気汚染が著しい場所などでは重要な選択肢となる。

(参考:1) 空気清浄機について
・活性炭フィルター
通常の活性炭フィルターでは、ホルムアルデヒドは除去できない。活性炭は多孔質で、その孔に様々なガスを物理吸着させる(性質は変えない)ことができる。しかし、ホルムアルデヒドはガスの中でも粒子が小さく、活性炭の表面の孔に一時的に収まってもすぐに離れてしまう。
・金属酸化物触媒
過マンガン酸カリウム等の金属感化物触媒を用い、ホルムアルデヒドを酸化させ、最終的に二酸化炭素等に分解する。途中、ギ酸が中間体として生成されるが、過マンガン酸カリウムと活性炭を併用することでギ酸を吸着分解できる。
・光触媒
酸化チタンの粉末を塗布した面に紫外線を照射して、ホルムアルデヒドを酸化させる方法。金属酸化物触媒同様、最終的に二酸化炭素等に分解する。
家具 家具も住宅建材同様、その素材及び接着剤、塗料等から化学物質が放散される。購入時には製品表示を確認し、タンス等は内部の臭いを実際に嗅いでみる。
・防臭剤
・防虫剤
(1) タンスの引出しや衣装ケースで防虫剤を使用する際には、標準使用量を守る。
※防虫メーカー標準使用量:10包/50L
(2) 空気より重いため《蒸気比重:5.07(空気:1.0)》、乳幼児や布団に寝ている時間が多い人がいる部屋では、できるだけ使用を避けるか換気を心がける。
(3) トイレで防臭剤として使用する際には必要最低限とし、換気を心がける。
たたみ
(1) 畳は目に沿って、1枚につき約1分ゆっくりと掃除機をかける。
(2) 湿気の多い畳は業者に頼んで加熱処理を施す。
(3) むし干しをする。
・寝具
・座布団
(1) 週に1〜2回、天日干しをする。
(2) 叩いた後は布団専用ノズルで掃除機をかける。
叩くだけだと、内部のアレルゲン(ダニの糞や死骸)が表面に出てきて逆効果となる。
(3) 超高密度繊維カバーを使用する。
ぬいぐるみ
(1) 丸洗いできるものはまめに洗濯する。
(2) 黒いビニール袋に入れ天日干しし、掃除機をかける。
加湿器
(1) こまめに水を取り替え、洗浄する。
(2) 開放型の石油・ガスストーブは水蒸気を発生させるので加湿は不要。
(3) 相対湿度が50%を超えたら加湿は控える。
観葉植物 水を与え過ぎない。
衣類
(1) クリーニングから戻ってきた衣類は一度袋から出し、日陰干ししてから収納する。
(2) 新しい衣類はホルムアルデヒドが残留していることがあるので、一度水洗いしてから着用する。
(3) タンスやクローゼットに使われる合板や塩ビなどから発生する化学物質が移染する恐れがあるため、特にベビー用品等を収納する場合はビニール袋に入れて収納する。収納家具類の中は狭い空間であるため、低濃度の化学物質でも高密度環境となる場合が多い。

ここには書ききれないものも沢山ありますが、上記の対処法に共通するキーワードとして換気、通気、除湿、天日・陰干し等が見えてきます。この簡素とも言える対処法をキーワードに色々な応用も試みて、その結果も是非ご報告下さい。
尚、ここに記された対処法は協力機関及び一般からの情報を元に作成されています。それにより全ての環境に当てはまるものでは無い事を前提としてご覧下さい。